西安の街を感じるため、昼前にレンタサイクルで町を一巡してみようと思い立った。ホテルのレンタサイクルを借りに行くと、あるのは古い型のマウンテンバイクのみ。しかもタイヤを見ると空気が抜けている。修理するよう頼むと、返ってきたのは「不明白(プーミンパイ・わからない)」の一言。借りるのは断念。
やむなく徒歩で西安の町に出た。滞在中のホテルが西安の城壁の外にあり、とりあえず西の城壁(安定門)を目指した。やっとの思いで安定門に辿り着き、目の当たりにしたその威容に圧倒された。一瞬にして疲れが吹き飛ぶ(忘れる)とは、こんな感情なのか。
西安古城のシンボルである城壁は、高さ12メートル、幅が上部で15メートル、底部で18メートル。これが旧市街中心部を周囲12キロにわたって取り囲んでいる。
そそり立つような城壁の東西南北四カ所に城門が設けられ、ここからどれほど多くの人たちが、シルクロードを西に向かって旅立ったことか。
西暦629年には三蔵法師玄奘も、ここを出立した。そのとき玄奘26歳。仏教の原典を求めるインド巡礼の旅への許可を申し出るも、当時の宮廷は、西域諸国との交易を絶っていたことを理由に、拒否。
西域諸国への入国は、誰もが諦めるなか、一人ひそかに、禁断の旅に赴いた玄奘。いったいどのような思いを抱いていたのだろうか?
安定門を見たら帰る予定が、一見して城壁の中は違う雰囲気が漂っていたことに心を奪われた。地元の人が行き交うバザールがあり、何の匂いなのか、きつい香辛料のような刺激臭が漂っていた。かつて世界の首都ともいわれた古都長安。日本の遣唐使もこの匂いをかいだと思われる。
ホテルに帰ったのは夕刻。10キロくらいは歩き廻った。
夜は、ホテルの横にあった屋台で済ませた。ラグメンというイスラム風のうどんと、羊肉の串焼きを食べて30元、日本円で約450円。
西安の印象は、思っていたほど物価は安くない。英語は通じない。私は中国語が全く分からず、コミュニケーションに苦労した。漢字を使っての筆談が、意外と役立った。二日目なのに、もう一週間くらい滞在している感じがする。