住職レター 2018

 12月

 例年九月のお彼岸頃から、各ご門徒宅の報恩講を勤め始め、十二月二日の善教寺本堂での報恩講をピークに、その後は五月の連休くらいを目途に勤め終わります。しかし、中々予定通りに勤めることは出来ません。報恩講参勤を予定しておりましたら、その日に葬式が入ったり。中には、予定が立て込み、一ヵ月くらい遅く参勤してしまったり。
 各ご門徒宅の報恩講参勤は、一昔前は、その地区の世話人さんに、「〇日から〇日にかけて参勤します」と伝えておけば、全て、その世話人さんが段取りをして下さっていました。しかし今は、善教寺の方から、各ご門徒宅へ参勤日を記した葉書を郵送しております。
 十一月の終わりを迎え、善教寺本堂での報恩講、近くなってきました。お接待当番地区の世話人さんと打ち合わせをして、お斉(報恩講料理)具材の注文。おつぼ菓子やみかんの注文。お荘厳準備にあたり、朱蝋燭(赤いローソク)の購入。仏具や香炉はいつもより入念にみがきます。
 この報恩講は、親鸞聖人の三十三回忌にあたり、本願寺第三代覚如上人が、そのご遺徳を讚仰するために『報恩講私記』をつくられ、勤まるようになりました。
 善教寺がこの地に開基して五〇五年。五百年以上の長きにわたり、善教寺でもこうして毎年勤め続けてきた報恩講です。
 今後も大切に勤め続けていきましょうね。

善教寺山門
 11月

 平成最後の善教寺パンフレット(法要日程表)が完成しました。毎年、秋のお彼岸が終わった頃から十月の初旬頃にかけて、来年度の法要日程を調整します。出講いただく講師の先生と日程の調整をしますが、なかかすんなりと決まりません。
 人気の講師は、二年くらい先までスケジュールが入っていらっしゃいます。今までご縁の無かった講師を紹介してもらったり、講師との法要日程調整は、意外と気を遣うものです。
さて、表紙を飾る今年の言葉は、「諸行無常」としました。昨年は「南無阿弥陀仏」、一昨年は「浄縁」、その前は「白骨の「章」、そのまた前は「悪人正機」。その年の表紙を飾る言葉、適当に思いつきで選んでいると思われるかもしれませんが、実はよくよく考えているんですよ。その年の世相を反映させたり、私の思いだったり、伝えたい事だったり。
 表紙の写真、この写真も大変なんです。位置と構図を決めて、何日かに分けて撮り続けます。晴れた日、曇った日、青空の色加減、雲の量、朝日が照る頃か、夕日を背景に撮 るか、何枚も撮り、ベストな一枚を選んでいます。

来年の善教寺パンレット『平成三十一年法要日程』とタイトルに明記しておりますが、新元号の元年でもある訳ですね。再来年は、新元号で○○二年となることを思うと、なんだか感慨深いです。

善教寺パンフレット表紙写真
 10月

 猛暑だった夏がウソのように、ここ数日、凌ぎやすくなりました。「暑さ寒さも彼岸まで…」ですね。お彼岸のこの時期、ちょうど太陽が真東から昇り、真西に沈みます。古より、命が終わり還る場所は、太陽が沈んでいく、彼の岸(彼岸)と云われてきました。西方浄土を追慕して、先だって逝ったお方を、お偲びするのが、お彼岸です。
 お彼岸だからでしょうか、本願寺からの御案内状にて、「すべてのご家庭に阿弥陀様を」と題したリーフレットが送られてきました。
 真宗門徒の方々は、家にお仏壇がご安置されているのは普通の事で、当たり前の環境で育って来られたことでしょう。しかし昨今は、家にお仏壇の無い家庭が多くなりました。「えっ…?」と思われるかもしれませんが、息子さんが家を新築され、その家にお仏壇は有りますか?
 最近では、マンションや現代様式の家にもマッチする、モダンで小さなお仏壇が多く有りますから、ぜひ、「すべてのご家庭に阿弥陀様を」のお気持ちを伝えて下さいね。

小型のお仏壇「いちょう」と「きく」
 9月

 西日本豪雨災害から、約ひと月半。復興復旧が急ピッチで進む中、被災したある方から、お話を伺っていますと、「あの時のまま時間が止まっている…」と。壊れた物は修復すれば良いですが、思い出の物や心の傷は、時間の経過と共に癒されるものではありません。
 お墓に土砂が流入し、墓石から遺骨まで全て流された方が、テレビのインタビューで、辛い思い先の見えない徒労感を話されていました。何もして上げることが出来ない申し訳なさと、お気持ちを吐露されている方の心情を思うと、ただただ心が痛くなりました。
 お盆に、善教寺本堂へお参りに来られた、地元のある会社経営者の方は、会社敷地内に流入した土砂を撤去するため、会社の営業を全て止め、従業員総出で土砂の撤去作業を毎日されているとのこと。事務職の女性スタッフから調理場のコックさんまで総動員だそうです。この会社経営者の方から、豪雨災害直後の、敷地内に流入した土砂現場を見た時の思いを聞かせてもらいましたが、お聞きするだけで目頭が熱くなり、手を差し伸べることが出来ない無力感にさいなまれました。
 被災された方々の心が癒されるのは、かなりの年月を要すると思います。皆さまの安穏なる生活が戻りますこと、心よりお祈り致します。

善教寺本堂北側の庭園
 8月

 この度の西日本豪雨災害により、被災された皆さまに衷心よりお見舞い申しあげます。
 ここ数年立て続けに、世界各地で想定外の自然災害が起こります。地球が怒っているのか、悲鳴をあげているのか、いずれにせよ、私たち人間は、この地球に住まわせてもらっているという、謙虚で感謝の気持ちと、大自然に対する大いなる畏敬の念を持たなくてはと、改めて思い知らされました。
 自然災害が起こる度に、我が身の無力さを思い知り、心が痛くなります。被災された方々の安穏なる生活が早く戻りますよう、心よりお念じ申し上げます。
 さて、六月二十九日(金曜日)『イタリアン精進料理を頂く懇親の旅』(善教寺仏教婦人会主催)が開催されました。場所は、北広島町の山奥にある、浄謙寺(浄土真宗本願寺派)。初夏から晩秋の週末のみ営業され、お席の予約が難しく、テレビや新聞でご覧になられた方も多い事でしょう。
 イタリアン精進料理を庫裏で頂く前に、浄謙寺さまの本堂にて、若院(住職のご子息)さまより、ご法話を聴聞させてもらいました。
 そして嬉しいことに、来年(平成三十一年)の一月十二日(土曜日)、善教寺の御正忌法要にて、浄謙寺の若院さまに、講師として来て頂くことになりました。
 また、ステキな浄謙寺の若院さまにお会い出来ますよ。皆さま、お楽しみに。

イタリアン精進料理
浄謙寺の本堂前にて撮影
 7月

 先日(五月二十七日)、善教寺本堂にて「初参式」(善教寺仏教婦人会主催)を勤めました。「初参式」とは、お子さまの誕生後、初めて仏さまの前で手を合わせ、お祝いする仏教行事です。
 仏前にて、お子さまと共に仏さまに手を合わせ、生まれたことの意味を確かめます。親として生きる出発点であり、赤ちゃんによって与えられた尊い仏縁であります。
 今年の出席者は年齢幅が広く、0才が五名、3才が一名、4才が二名、5才が一名、9才が一名の合計十名。4才以上だと、善教寺本堂へお参りしたこと、かすかに覚えていることでしょう。0才とか3才だと、細胞レベルの記憶として、ちゃんと刻まれていることでしょう。大人になって、どこかの寺の本堂へお参りした時、「ここ、なんだか懐かしい…」と思ってもらえるだけでも、有り難い尊い良きご縁です。

初参式の様子
挨拶される仏教婦人会の下川会長と
来賓の善教寺総代(石原総代・上田総代・下満総代)
平成30年度 善教寺初参式
 6月

 お寺の建物内に調和するカラー、何色だと思われますか?
 私は、青色だと思っています。青は青でも、鮮明な明るい青色。青の中でも、大好きな青色があります。それは、わが街地元が誇る、世界で有名な陶芸家・木村芳郎さんが生み出す、紺碧の青(木村ブルーと称される青)色が大好きです。


 十八年前、シルクロード仏教遺跡探訪の旅に出ました。その帰国後にご縁があり、木村芳郎さんと出逢い、紺碧の青に魅了されました。
 木村芳郎さん曰く、世界を旅し、早朝のサハラ砂漠の澄んだ空、ギリシャのエーゲ海、南極に近い海などを見て、「この色を焼き物に焼き付けたい」と決意されたとのこと。


 いつの日か、善教寺本堂の香炉を、木村芳郎さんが生み出された紺碧の青の香炉で、参拝者をお迎え出来たらと思っています。
 ちなみに、玄関に鎮座する狛犬、これも木村芳郎さんの作品です。

 5月

 心地良い天気の毎日が続きますね。今頃になって、護持会総会(毎年二月十一日に開催)の話題で申し訳ありません。実は先日の法事にて、寺報をお渡しすると、「この時期、いつも護持会の写真が掲載されていましたが、今年は開催されなかったのですか?」と言われました。そうなんですよ。護持会総会、ちゃんと予定通り開催されましたが、写真を掲載しておりませんでした。ちょうど同じ時期に、善教寺にて消防訓練が開催されたものですから、この話題と写真を掲載しておりました。
 護持会総会の写真、楽しみにしていらした方には、期待外れで申し訳ありません。遅くなりましたが、ご覧くださいね。

挨拶される石原会長、真中に上田副会長、右に下満副会長
護持会総会の様子
護持会総会集合写真
 4月

 今年も仏教婦人会報恩講並びに総会を無事に勤めることが出来ました。法要初日に仏婦故会員追悼法要を勤め、二日目には総会を開催しました。法要前々日くらいから、いつも天気を心配するのですが、初日はあいにくの雨模様。しかし二日目には天気も回復し、多くの参拝者がお参り下さいました。
 講師の足利先生は、御年八十七歳。今年も元気に、兵庫県尼崎から、お一人でお越し下さいました。足利先生とのご縁は、私が学生の頃からなので、もう三十年にはなるでしょうか。年齢を感じさせない話術と元気なお声に、今年もパワーをもらったような感じです。
 さて、仏婦総会でもご案内をしましたが、六月二十九日(金曜日)『イタリアン精進料理を頂く懇親の旅』(善教寺仏教婦人会主催)を企画しました。男性の方からお叱りを受けそうですが、ご婦人の方限定であります。そんな中、私が男一人お供して添乗員ばりに動き回りますので、ぜひ一緒に行きましょう。お楽しみに。

総会時の仏教婦人会役員
講師の足利先生
多くの参拝者で熱気溢れる本堂内
 3月

 今年の冬は、尋常ではない厳しい寒さが続きました。立春を過ぎてもまだまだ寒いですが、ご体調いかがですか? 
 極寒の中、二月十二日、消防訓練が行われました。地元の消防団を中心に、近隣の消防団と東広島消防署も駆けつけて下さり、緊張感の中、実施されました。午前十時、私が119番へ電話し、訓練スタート。「消防訓練です。善教寺の裏手、山林から出火…」と伝えるように言われたのですが、いざ119番に電話すると急に緊張しました。これが訓練じゃなかったら、果たして、119番に電話して、冷静に状況を話すことが出来るか?、心配になったほとです。
 勇猛果敢な消防士さん達のお陰で、無事に鎮火(消防訓練終了)。消防士さんのお姿に敬服すると同時に、改めて火災予防に努める大切さを思い知らされました。

 2月

「世のなか安穏なれ、仏法ひろまれ」
 右のお言葉は『親鸞聖人御消息』に書かれており、親鸞聖人が不安と争いの時代にあって、念仏者の目指す道を示されたものです。親鸞聖人七五〇回大遠忌スローガンでも使われました。世の中が安らかで平穏であれば、争いは無くなるのでしょうに…。
 さて、年始にあたり、皆さま各自、今年の抱負なり目標を掲げられた事と思います。私の抱負は、『安穏…』です。ここ数年、特に弟が信楽寺へ入寺して以降、時間に余裕なく、いつも何かに追われるがごとく生活してきました。
 今年は、寺の坊主らしく、柔和な笑顔で、安らかで穏やかに過ごせたらと思っています。しかし今年も年始早々の御正忌法要から、バタバタと忙しなく過ごすことになってしまいました。私自身、安穏と過ごすのは、今年も難しいようです。
 しかし何より、世の中が安らかで平穏であってほしいと強く思います。これから、どんな世の中になるでしょうか…。

 1月

 年末の風物詩となりました「今年の漢字」。今 年は「北」でありました。今年の世相を表す漢字 ですから、「北」なのでありましょう。
 善教寺の「今年の漢字」は、「墓」です。「墓」で始 まり、「墓」を思い、「墓」を考え、「墓」を案じて、 「墓」ばかりに思いを巡らせた、そんな年でありました。
 各墓所にお参りした際、 改めて他の墓に目をやって みましたが、なんと無縁墓 の多い事でしょうか。中に は、地震で倒壊したままの 無残な墓もありました。こ のようなお墓を見ると、心が痛みます。
 ここ数年、新しく善教寺 門徒になられる方が増え、その方々にお墓を建碑して頂 けたらと思い、善教寺墓苑を 開山しました。しかし予想以 上に、既存の立派なお墓を善 教寺墓苑にお引越しされる方が多かったです。
 自分が入るお墓について、 家族みんなで話し合い、五十 年先、百年先を見据えて、お 墓を建碑して頂けたらと思います。

 

住職レター 2017 2016