住職を継職し早や5年が経過。日々の法事や葬式を勤めることで精一杯だった頃、三蔵法師・玄奘が通った、シルクロード仏教遺跡を旅してみたいと思い立った。日常の寺の業務はすべて忘れた上で、仏教の原点に立ち帰り、僧侶の歩む道を見つけてきたいと。
2000年4月14日、広島空港から上海経由で西安へ向かった。旅先は中国、しかも西域のシルクロード。欧米やハワイなどのように観光地化されていない、海外旅行に馴れた人でも慎重になるような場所。様々な困難が予想されたが、この時は、高揚感に浸っていた。
この時期、中国への旅行者は少ないのか、乗客は20人くらいであった。2時間のフライトの後、上海空港にて入国手続きを済ませ、また同じ飛行機に搭乗し、西安空港へ到着。しかし、リムジンバス乗り場には、バスは無く、来る気配すらなし。前途多難さを思わせる事態に、早速遭遇した。疲れもあり、やむなく、タクシーに乗車。ホテルまで約1時間。料金は150元、日本円で約2,200円。痛い出費である。
今回の旅は、往復の航空券と中国滞在ビザ、西安で5日間のホテルの手配を、広島市内の旅行会社に依頼した。ゆえに最初の5日間だけは、なんとか生活が保障されていたという訳である。
西安へ降り立ち、急に不安が襲ってきた。
西安の街