朝食後、明後日に西安から鉄道で移動するための切符を取得しに行った。ガイドブックによれば、シルクロード鉄道は中国13億の人民を移動させるための大動脈であり、鉄道切符の入手は困難を極めるとあった。外国人観光客は、ホテルか最寄りの旅行会社を通じて、別途手数料を支払って購入した方がいいと書いてある。それを信じて、先ずはホテルの旅行会社に行った。行き先、シート(座席)の種類を紙に書き、切符を購入しようとすると、即座に「出来ない」と言われた。抗弁する間もなく中国語でまくし立てられ、諦めて退散。
その後、ホテルを出てすぐのところにある民間の旅行会社に行ったが、ここでも断られた。次はタクシーで雨の中を(今日は朝から雨)、西安で一番大きな中国国営旅行会社(CITS)に行ってみたが、ここでも出来ないとの返答。まさに八方ふさがり。困り果て、泣きたくなった。言葉が通じないので、カウンター越しに鬼気迫る表情で筆談をしていたせいか、奥から日本語が少し分かる人が来てくれた。その方から「外国人旅行者は三日後以降の切符しか発券できない」と言われ、やっと状況を理解した。
覚悟はしていたものの、日本では想像できない事態である。その上、言葉の壁。疲れ果て、ホテルに帰った。明朝、西安駅に行き、窓口に並んで自力で取得するしかなくなった。
その後は、体力を温存しておこうと、部屋でインターネットに接続した。中国のインターネットはアクセス状況が悪いと聞いていたが、ここ西安に関しては問題ない。とはいえ、我が寺ではISDN回線でストレスなく通信しているが、こちらは通信速度が遅いせいか、写真データを送信するのに五分くらいかかる。これからシルクロードを進むと、果たしてインターネットにアクセス出来るのか心配である。
昨日、観光ツアーで一緒だった日本人について話しておく。女性の方は、西安に仕事で来られていた。スイスの医療機器メーカーの日本法人の会社にお勤めで、休暇をもらい観光中とのこと。英語も達者で、かなり通訳してもらった。
もう一人はバックパッカーの男性で、北京から昨夜、鉄道で西安入りしたとのこと。この方はヨーロッパからアメリカまで、リュックサック1つで渡り歩いているそうだ。旅の色々な話を聞いていると、ここも行きたい、あそこも行きたいと、気持ちが大きく膨らんだ。話には聞いていたが、バックパッカーは、旅の道中、どんな危険な目にあったかが美談のようだ。この方は、直接危険な目には遭ってないそうだが、こんな危険な話を聞いたよと教えてくれた。
この方は、旅を終えて日本に帰るそうだ。別れ際に「お守りだよ」って、小さなコンパスをくれた。異国の地で大変なハプニングに遭遇し、心細かった私の心を癒してくれた。