中国の有名な観光地としてよく知られ、年間50万人が中国内外から訪れる桂林という場所がある。テレビのコマーシャルなどにもよく使われる風景で、灕江という川沿いに様々な奇峰怪石が連なり、中国山水画に描かれている。
炳霊寺石窟は、その桂林の黄河版を思わせる光景であった。素晴らしい渓谷美と圧巻の石窟。そしてまた規模が大きい。これを間近で見て、石窟に触れて、ここの空気を味わうことが出来た。かなり無理して訪れた甲斐があった。
余談だが、この辺の黄河は濁りなく、綺麗に澄んでいた。海抜1700メートルのせいか寒く感じた。小型のボートに1時間も乗って、その間、風を受けっ放しで身体が震えてきた。エンジンはヤマハ製だから大丈夫とは思ったが、ここで沈没したら助からなかっただろう。
炳霊寺とは、チベット語の音訳で「千仏洞」の意をもつといわれている。人里離れた積石山の渓谷3キロにわたる崖に石窟があり、石像694体、仏教壁画900平方メートル、五世紀に創建された。



第169窟には「西秦建弘元年」(420年)の墨書の題記が残されており、敦煌莫高窟、先日行った麦積山石窟と並んで、中国の石窟寺として最初期のものであることが示されている。
ここに鎮座した、27メートルの摩崖大仏は唐の時代のものである。これを真下から見ると、圧巻で、呆然となり、適当な言葉が思い当たらないくらい、凄みを感じた。黄河に、この大きな摩崖大仏が鎮座する姿は、実に不思議な光景であった。
この大自然の中で、ひっそりと今日まで千五百年の時を刻んできている。おそらくこれからも、この場に鎮座し続けることを思うと、言葉にならない感動を味わうことが出来た。それと同時に、自分の存在の小ささ、大自然の凄さ、先人の残してきたものの偉大さに気付き、涙が溢れてきた。
夕方、ホテルに帰り着くと、マネージャーと旅行会社のスタッフが、心配そうに迎えてくれた。張りつめていた緊張感から、一挙に解放された。この蘭州の温かい人柄にも、心から感謝である。
・タクシーの運転手(右)1s.jpg)


→【4月26日】素敵な町、蘭州〈蘭州〉
