【2000年4月25日 午前】人里離れた、秘境〈蘭州〉

 今日はここから南西へ170キロ離れた、炳霊寺石窟に行くため、ホテルスタッフからのモーニングコールで早朝に起こされた。この時期、中国は観光シーズンではない。観光ガイドブックには、炳霊寺石窟ツアーが、毎日ホテルの旅行会社から出ると書いてあったが、それは夏の観光シーズンだけであった。
 旅行会社と交渉して分かったことは、炳霊寺石窟ツアーは中国の旅行会社にとっても、かなり厄介だということ。なぜかと言うと、炳霊寺石窟へはホテルから2時間タクシーで行き、そこから船で黄河を50キロ行く。この船の料金が揉めるそうだ。今はオフシーズンのため、船頭たちは手ぐすね引いて待っている。日本人が一人で行けば、罠の中に飛び込んで行くようなものだと言われた。
 確かに、これらのことは、観光ガイドブックでも警告されていたが、まさか現地の旅行会社の人に心配してもらえるとは、思ってもみなかった。
 ここで昨日の話しに戻る。炳霊寺石窟に行くため、ホテルのマネージャーと旅行会社の人と、簡単な英語と筆談で打ち合わせをした。
 先ず言われたのが、今は行くべきではないと。しかし、私がどうしても行きたいと強く伝えた結果、現地では相手から何を聞かれても話さず、会話を交わさず、「中国人」になりきることになったと云う訳だ。

炳霊寺石窟への船着き場
黄河を50キロ行く
そびえ立つ炳霊寺石窟への入口

 ホテルのマネージャーと旅行会社の人は、大変心配をしてくれていた。船の料金は交渉次第とのこと。妥当な金額と昼食代をタクシーの運転手に、事前に渡して、何を聞かれても喋らないようにと、何度も言われた。
 そして今日の早朝、ホテルを出発前、旅行会社の人がタクシーの運転手に、万事打ち合わせ通り、この日本人を安全に全て助けるようにと、強く言って、送り出してくれた。
 今朝のモーニングコールに話を戻す。早朝にはホテルを出発する必要がある。ホテルのマネージャーが「一人で起きられるか?」と聞いてきた。私が「ノープロブレム!(大丈夫だ)」と返答するも、「心配だからモーニングコールをする!」と言われた。私の言葉が信用ならなかったのか、マネージャーが良い人だったのか、おそらく両方だろう。
 いろいろ画策して行った炳霊寺石窟だったが、行った甲斐があった。小型のモーターボートにタクシーの運転手と私を乗せて、黄河を上ること約1時間、そこは人里離れた別世界、まさに秘境であった。

石窟へ向かう参道
炳霊寺石窟の石門
船着き場の土産物屋

→【4月26日】素敵な町、蘭州〈蘭州〉


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