昼過ぎに宝鶏を出立した。外国人旅行者が主に利用する『軟座』のシートが取れていたので、気持ちに余裕があった。
そこで午前中は銀行に行き、日本円を人民元へ両替した。中国では各地に中国銀行がある。パスポートを見せて、1万円を780元に両替した。主に日本円のトラベラーズ・チェック(旅行小切手)を使い、足りなければクレジットカードがあるから大丈夫と思っていたが、早計だった。ホテル以外、全くクレジットカードは使えない。現地に入ってみないと分からない事情というのが旅にはつきものだ。さすがに、これには参った。
昼から宝鶏駅に行って、また一つ驚いた。『軟座』と『硬座』では待遇が全く違っていた。定刻1時間前に改札口に行くと「ここは違う、ついて来い」と言われ、向かった先には『軟座』専用の改札口と待合室になっていた。待合室にはソファーが設けてあり、テレビもあり、駅員が片言の英語で「列車がホームに入ったら案内するから待つように」と言われた。一昨日の西安からの移動とは、雲泥の差である。
こちらの列車事情が、ようやく分かってきた。地元の人が利用する『硬座』には指定席と、もっと安い自由席があり、その自由席から、指定席の方へ押し寄せてくるらしい。車掌は、なぜ注意しないのだろうか。



無事、列車に乗り気持ちが落ち着いたのか、ここ最近では珍しく空腹を感じた。鞄にはチェーンロックを掛け、食堂車に行ってみた。ここでは、いつも日本で食べている中華料理という感じの料理を食べることができ、とても美味しかった。この列車は北京発だから、北京料理だったのかも。西安は四川に近いから、担々麺に代表される辛い四川料理ばかりだった。さすがに、香辛料の強い辛めの味付けは、もう勘弁して欲しい。今日はお陰で優雅な(でもないか)五時間の旅だった。
そんなこんなで、天水駅に到着した。
ところがここでトラブル発生。天水は小さな町である。ガイドブックによると、列車のチケットが入手困難だから、駅を出た右側の旅行会社に行くようにとあったので、直ぐに行ってみた。
筆談で明後日のチケットを注文すると、明日の23時発しかないとの返答。当初の予定を変更し、明日の夜中に出発することにした。この旅行会社で、10分くらい待たされただろうか。チケットは、日本のようにオンラインで販売されていないようで、担当者が駅に走って購入してくれたようだ。
安心したのも束の間、チケットの日付を見ると、今日の23時発となっている。唖然とした。それから「ああだ、こうだ」の言い合い。2時間くらいは筆談を交わした。もう前金で支払っているため、こっちも必死だ。いくら何でも、着いたその日に出発することは出来ない。私の形相に根負けしたのか、旅行会社の方が、「明日の夕方5時にここへ来ればチケットを渡す」と、念書らしきものを書いてくれた。
それからタクシーで、ガイドブックに載っていたホテルにチェックインした。疲労困憊。食事を食べてなかったが、食べる気力も残ってなかった。今日の探訪記を書き終えたら、寝るだけである。


